保護者の人に向けて――IBSの子どもに親ができること

「気のせいじゃない?」

高校生だった私が、母にそう言われたとき、心の中で何かがスッと冷めるのを感じました。

本当は、ただわかってほしかっただけなんです。
朝、通学前に何度もトイレに駆け込み、間に合わないかもしれない不安で震えていたあの頃。
でも、周りにはその苦しさが見えませんでした。

私は、**過敏性腸症候群(IBS)**という病気と学生生活を両立させようとして、
毎日必死でした。
そして、親が「理解しようとしてくれた瞬間」に、どれほど救われたかを今でも覚えています。

この記事は、IBSの学生(特に中高生)を持つ保護者の方に向けて書いています。
既に子供のために色々と試されている人もいらっしゃるでしょうが、
どうか、お子さんの“見えにくい苦しみ”に、少しだけ目を向けていただけたらと思います。

目次

「IBS+学生生活」がどれほど辛いか、知っていますか?

IBSは、学生生活を送る子にとって「地雷原」のようなものです。

  • 通学電車の中、途中でトイレに行けない不安
  • 授業中にお腹が鳴る、痛みで集中できない
  • テストにも集中できず、なかなか結果がでない
  • クラスメイトや友達との付き合いが消極的になる
  • 体育の授業で、いつ症状が出るかの恐怖
  • 修学旅行、遠足、受験…

わたしは授業中に何回もトイレに行くのがとても恥ずかしかったです。
トイレに行きたくても我慢しちゃう人が多いと思います。

周囲には見えないだけで、毎日がギリギリの綱渡りのようなもの。

「甘えじゃない?」
「気のせいでしょ?」
「ちゃんとした生活すれば治るよ」
そんな言葉が、ナイフのように突き刺さることもあります。

母の「あなたはまだマシな方らしいわよ。潰瘍性大腸炎の人は家から出られないんだから」という言葉は今でも覚えています。
おそらく励ます意味もあったと今では思えますが、当時は自分の辛さを否定されてる気がしてしまって…

IBS+学生生活は、抜けだすことのない地獄のように感じる人も多いと思います。

知っててほしい!IBSの症状は本当に人それぞれ!

「IBS(過敏性腸症候群)の症状は人によって本当にさまざま」ということを、ぜひ知っておいていただきたいです。

ネットや本にはIBSについてたくさんの情報がありますが、そこに書かれているのは、あくまで“よくある症状”にすぎません。

IBSには、大きく分けて「下痢型」「便秘型」「ガス型」「混合型」のタイプがあります。ただし、同じタイプでも症状の出方はまったく違うことが多いです。

たとえば——
・腹痛の頻度や強さ
・排便のタイミング
・症状が出やすい時間帯や場面
・合う/合わない食べ物
・効果のある治療法や対処法

こうした点は、本当に人それぞれです。

わたしは一時期コーヒーを飲むと、誇張でもなく10秒くらいで便意に襲われました。

だからこそお願いしたいのは、「ネットの情報だけで判断せずに、お子さん自身をしっかり見てあげてください」ということです。  
お子さんにとって、いちばんの理解者になってあげてほしいと思います。

「親に言えないこと」「親にしかできないこと」

IBSの子どもは、意外と“本当のこと”を言えていません。
「またお腹が痛い」なんて、何度も言えば「またか」と思われるかも。
心配かけたくない。甘えてるって思われたくない。

トイレに間に合わなかった話は、恥ずかしい、心配をかけたくなくて親にも相談できませんでした。
10年以上IBSに苦しんでいる今も、誰にも言えていません。
学校にはスペアの下着を毎日持っていっていました。


だから黙って我慢する。

でも、本当は「わかってほしい」「受け止めてほしい」って、心の奥では叫んでるんです。

親ができることは、完璧に解決することじゃありません。
ただ、「そうか、辛いね」「無理しなくていいよ」って、味方になること。

それだけで、どれだけ救われるか――。

私の体験:親にしてもらって嬉しかったこと

私の高校生の時のエピソードを1つ紹介させてください。

高校生の時に、私が過敏性腸症候群になって母親がしてくれたことの1つが「シナモンスティックを買ってきてくれた」でした。

シナモンの香りはリラックス効果があると調べて分かったから、その日にすぐ買ったらしいのです。なのでわたしは高校でもシナモンスティックを持ち歩く人でした(笑)。ちなみに親にはリラックスできるよ!って言っていましたが、実際には効果は全くありませんでした。

しかし、当時はとても嬉しかったのです。私のためにインターネットで調べてくれて買ってきてくれた、その事実だけで、心配してくれている、味方でいてくれている、ということが分かったからです。

今でも私は、そのシナモンスティックを持ち歩いています。とっくに香りは消えていますが、とても心強いお守りです。

親ができる、ほんの少しのサポートが救いになる

IBSの子どもにとって、特別な治療や完璧な言葉は必要ないと思っています。

でも、こんなサポートがあると、救われることがあるんです。

  • 「また?」ではなく「今日も辛いんだね」と声をかける
  • 朝、体調が悪そうなら「遅れて行こうか」と提案する
  • 一緒に病院に行ってみる、情報を調べてみる
  • 「行けなくても大丈夫だよ」と伝えて、休むことへの罪悪感を減らす
  • 「つらい」と言える空気を家庭の中につくる

理解しようとすること、それ自体が、ものすごく大きな力になります。

最後に――「味方でいてくれる」その存在が、何よりの支え

IBSという病気は、外からは見えない、でも確かに存在する苦しみです。
その苦しさと毎日向き合っているお子さんにとって、
「親が味方でいてくれること」は、生きる力になります。

完璧じゃなくていい。わからなくてもいい。
「わかろうとしてくれること」が、一番うれしい。

親も仕事や家事で毎日が忙しいかもしれません。

しかしどうか、今日から少しだけ、その一歩を踏み出してみてください。

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この記事を書いた人

IBS下痢ガス型です。10年以上の付き合い。

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